在外公館派遣員制度というものをご存知ですか。日本の在外公館で任期付きで働くことができる制度で、国際的な経験が積めるということで、毎回多くの方が応募しています。
先日行われた同制度の説明会に参加してきましたので、内容をご紹介します!
説明会では派遣元である国際交流サービス協会の職員の方からの説明と、過去に同制度で韓国に派遣された経験のある元派遣員の方(以下元派遣員さんとします)の実体験に基づいたお話を聞くことができました。
- 興味はあるけどどういう制度かよくわからない
- 受験を考えており、より詳しく知りたい
- 経験者の話を聞きたい
といった予備知識のある方から、
- 海外で働いてみたい
- 語学力を生かして何かしたい
- 大使館、領事館での仕事に興味がある
といった方向けの記事です。
外務省在外公館派遣員制度のあらまし
まず、説明会にて配布された一般社団法人国際交流サービス協会発行の試験案内から、制度のあらましを引用します。
外務省在外公館派遣員とは、労働者派遣法の下で、わが国の在外公館(大使館、総領事館、政府代表部、領事事務所)に原則2年の任期をもって派遣され、主として館務事務補佐などの実務面にあたる傍ら、国際社会での経験を積み、友好親善に寄与してもらおうとするものです。
具体的な仕事の内容は在外公館によって異なりますが、主に語学力を活用した様々な業務の支援を行うこととなります。これには公用出張者が来訪する際の空港における作業やホテルの予約及び会計、庶務などの部署での文書作成や対外的な折衝への立ち合いなどが含まれます。
平成31年4月1日現在、215公館に274名を派遣しています。
出典元:第90回 外務省在外公館派遣員試験案内|一般社団法人 国際交流サービス協会
大使館などの在外公館が職場となりますが、国際交流サービス協会の嘱託職員として派遣されますから、身分としては公務員ではなく民間人です。またご存知のとおり在外公館は日本の法律の下にありますから、日本の労働基準法が適用されます。
仕事としては引用のとおり、語学力を活かしたものとなりますが、基本的には便宜供与=雑用です。
派遣員を募集する在外公館は毎回異なっており、今回(第90回)の募集はこちら(国際交流サービス協会のページに飛びます)のとおりです。
今回(第90回)は42公館42人の募集となっています。
在外公館派遣員の仕事内容
元派遣員さんが実際に経験した仕事内容は次のとおりです。
文化広報活動
- 折り紙教室の受付。その他交流会の補助業務。
公用車に関すること
- 公用車のドライバーへの指示、配車
- 公用車の管理(オイル交換等、車の整備)
公用出張者対応
- 公用出張者(主に政治家)の空港への送迎、チェックイン手続き
- ホテルの予約
- 外出(買い物など)の付き添い
通訳・翻訳
- 会計書類、死亡診断書、各種説明書(一般的な電化製品等)の翻訳
- 館内での通訳、公用出張者の外出への付き添い、その他外部業者とのやり取りの際の通訳
(正式な通訳業務は外務省職員が行う。対外的に影響の小さいものや、雑務などの通訳を派遣者が行う)
その他
その他派遣先公館・課により様々だが、基本的に雑用
公館ごとに職員数に差があり、職員が少ない公館では派遣員に任される仕事の種類は増える。
逆に職員数が多い公館は仕事の種類が限定される。
待遇
(1)国際交流サービス協会の嘱託職員として採用され、各在外公館に派遣されます(1年契約、更新は1回まで可)。また、同協会の規定に基づく報酬、住居費、および渡航に関する費用等を支給します。
(2)社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)に加入し、労災保険が適用されます。
(3)月額報酬はおよそ24~39万円で、金額は派遣先により異なります。
(4)詳しい労働条件等は試験会場にてお伝えします。
使用期間:なし
就業時間:原則として1日7時間45分勤務
時間外労働:あり
加入保険:雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険
事業者の氏名:一般社団法人国際交流サービス協会
雇用形態:派遣労働者(嘱託職員)
出典元:第90回 外務省在外公館派遣員試験案内|一般社団法人 国際交流サービス協会
月額報酬が24~39万円というのはなかなか魅力的な金額ではないでしょうか。さらに12月にはボーナスがあり、その他支度金や着任手当なども報酬に含まれます。ただ、報酬から社会保険料が引かれますので、実際の手取りはもう少し少なくなります。所得税や住民税は納税義務がありません。なお、月額報酬に幅があるのは、在外手当てが派遣先により異なるからです。
また、雇用保険に加入しますので、帰国後就職活動をする間失業保険の支給を受けることができます。
住居費は支給されますが、自宅の光熱費は自己負担とのことです。
有給休暇は年に20日間取得できます。1年目に余った日数は2年目に繰り越されます。
日本の祝日が必ずしも派遣先で休日だとは限りません。
ちなみに政局が仕事の忙しさに影響を及ぼすこともあるようで、元派遣員さんは派遣先の韓国にいた際、竹島問題により日本から公用出張者がかなり減ったため、暇な期間ができたっぷり旅行ができたそうです。
応募資格
下記の条件を願書提出締切日(2019年5月7日)現在満たしていること。
(1)日本国籍を有する者(二重国籍可。但し、任国の国籍及び永住権保持者は、査証及び赴任後の滞在許可取得に問題が生じるため不可)。
(2)高等学校卒業以上の者。
(3)普通自動車運転免許証を保持する者(AT免許可。外国免許は出願までに普通自動車免許に切り替えること。免許番号の記入がないと願書の受付はできません。教習中、仮免許、取得見込みではご応募いただけません。)
出典元:第89回 外務省在外公館派遣員試験案内|一般社団法人 国際交流サービス協会
応募の条件はかなり易しいですね。年齢制限もありませんし、高卒以上の方でしたらほぼどなたでもチャレンジできます。
運転免許が必要なのは、派遣先でドライバーをするためではなく、自らの通勤手段として必要となることがあるためとのことです。
試験について
(1)第一次試験
試験科目:外国語筆記、一般常識、日本語作文、適性検査
※受験言語は希望する一言語のみ。複数言語の受験は不可。
第一次試験は、語学試験、一般常識試験、日本語作文、適性検査からなっています。いずれも筆記による試験となります。語学力の目安は、外国語で書かれた新聞や雑誌を、辞書を使わずに理解して、その言語で内容を説明できる程度とお考え下さい。英語検定試験やその他の語学検定試験の成績は基準にされておりません。一般常識試験は市販の就職試験問題集、参考書のレベルと考えてください。日本語作文及び適性検査は派遣員としての適性を見るもので、記述方式です。なお、過去の試験内容、試験問題等に関すること、また応募者数や試験倍率のお問合せにつきましてはお答えできませんのでご了承ください。
出典元:第89回 外務省在外公館派遣員試験案内|一般社団法人 国際交流サービス協会
こちらのリストから、行きたい国と自分の語学力との兼ね合いで受験言語を選ぶことになります。受験した言語を募集している公館の中から派遣先が選ばれます。例えば英語で受験した場合、英語を募集している公館のうちどこかに行くことになります。派遣先の希望は出せますが、必ずしも希望通りになりません。
語学試験は英語についてはマークシート方式、その他の言語については記述方式です。
元派遣員さんによると、超ハイレベルな語学力は求められていないそうです。
(元派遣員さんは、「どうせ受からないけど受けてみるかあ」で受かったとのこと)
試験対策として、受験する言語での新聞や雑誌を読んでおくとよいそうです。というのも元派遣員さんは、事前に新聞で読んでいたニュースが、たまたま語学試験の日本語訳問題で出題され、かなり正確に回答できたそうです。
一般常識問題については市販のSPI対策本で対策できるとのこと。
日本語作文については志望動機などが聞かれるとのことでした。
(2)第二次試験
試験科目:面接(日本語)及び外国語会話
元派遣員さんの経験談・アドバイス
現地での生活について
住居
- 前任者から引き継げる場合が多い
- グレードの高い家に住めることが多い
車
- 前任者から引き継げる場合が多い
- 購入する場合、国際交流サービス協会から資金を借りられることがある(給与から天引きされることで返済する)
- 運転は運転手を雇うか自分で運転
その他
- 現地の職員が手助けをしてくれるため、困ることは少ない。
やりがい
- 海外(行きたい国)で生活ができる
- あまり縁のない国に行ける
- 日本を背負う
- 自分で工夫して仕事ができる
求められている人・派遣員に向いている人
- 積極的な人・ポジティブな人
- コミュニケーション能力の高い人(狭い人間関係の中でうまくやれる人)
- 根を詰めすぎない人、気を抜きながら仕事ができる人。
(思いつめて途中帰国せざるを得なくなった方もいるそうです)
任期満了後(帰国後)の進路
- 進路は自分でつかまないといけない(国際交流サービス協会から紹介してもらえることもある)
=2年先を見据えてプランニングしないといけない - 元派遣員さんの同期の進路の例
海外営業、マスコミ、語学教師、アフリカで企業、公務員、大学院(海外)、JICA、現地の人と結婚し現地で定住、国際交流サービス協会 - 元派遣員さんは現在ご自身で事業をされているそうです。
Q&A
説明会の参加者からでた質問とその回答を紹介します。
Q:1年毎に契約更新ということですが、契約更新せず1年で帰国することも可能ですか。
A:2年間派遣することを前提に採用するため原則不可です。病気などやむを得ない事情で途中帰国することはあり得ます。
Q:任期が延長されることはありますか。
A:派遣員本人の希望で延長することはできませんが、任期満了直後に大きなイベント(選挙等)があり人手が必要な場合等、各公館の要望により数日~数か月程度任期が延びることがあります。
Q:現在海外に住んでおり試験のために帰国するのが難しいのですが、オンラインで受験することはできませんか。
A:試験は国内のみで行い、海外居住者向けにオンラインでの対応などは一切していません。また、各種通知の送付のために国内の住所が必要です。海外への送付は行いません。
Q:英語で受験し、非英語圏に派遣された場合に、実際には仕事上英語を全く使わず困るといったことはありませんか。
A:英語で募集している公館については、英語のスキルが求められているということです。現地語ができないからといって、仕事ができないということはありません。
Q:現地採用職員や外注先などで、英語も日本語も全くできない職員がいると聞きますが、英語で受験した場合にそのような人とのやり取りはどうなりますか。
A:お互いの言語の簡単な表現を自然と使用するようになることが多いです。それで解決できるぐらいの仕事ということです。
Q:募集公館のリスト上の現地語と英語の2言語で受験が可能な公館において、英語が現地語より前にリストアップされている場合と後ろにリストアップされている場合がありますが(例:在ブルネイ大使館-英語又はマレー語 在ベトナム大使館-ベトナム語又は英語)、順番に意味はありますか。
A:前にリストアップされている言語(在ブルネイ大使館であれば英語、ベトナムであればベトナム語)のほうが公館からの期待度が高いと言えます。試験の成績が同程度の場合、前に羅列された言語での受験者が比較的採用されやすいでしょう。
Q:募集公館は毎回変わるとのことですが、次回以降の募集公館を先に知る方法はありませんか。
A:事前に募集公館を知る方法はありませんが、制度が変わらない限り任期は2年ですから、それぞれの回の募集公館はその2年前の回と近いものになると考えられます。
おわりに
いかがでしたか。2019年春の第90回試験の応募期間は、2019年5月7日まで(当日消印有効)となっています(海外からの送付の場合は4月25日必着)。
試験は年に2回ありますので、今回は見送って次回以降チャレンジするというのもありですね。
再受験の制限もありません。
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なお、今回の記事は案内冊子や説明会の内容をもとに作成しておりますが、記載誤りや内容に変更がある可能性があります。
応募される方は国際交流サービス協会のHP(こちら)で条件等を必ずご自身でご確認ください。